がらくたのハート
 
『ラズ、本当は優しいのですね』

「え?」

『グスタが石を投げようとした時、庇ってくれたでしょう? 猫にだって』

「そ、そんなんじゃねえよ! お前みたいながらくたを庇っても得なんかないもん」

ラズは顔を赤くしていました。
熱でもあるんですか?
体温を計ろうと、彼のオデコにワタシの指を当てたら怒られました。

「で? お前は何をやってたんだ?」

『ワタシですか? ワタシはカノンさんに謝りに行く所です』

「羊飼いの姉ちゃんか。何かやったのか?」

ワタシはラズに事のあらましを説明しました。
カノンさんの心を傷つけてしまったこと。
心のないワタシが言った機械の言葉を。すると……。

「お前バカじゃないのか!」

ラズも怒ってます。

『ごめんなさい』

「俺に謝るな。姉ちゃんに謝ってやれよ」

すると、ラズは何かを閃いた様です。

「ただ謝るだけじゃあ駄目だな。何かプレゼントを渡せよ」

『プレゼント?』

「……そうだ! 花なんかいいんじゃないか? サックス山にある奏恋花(そうれんか)とか」

奏恋花。
チューバ山脈にあるサックス山でしか咲かないと言われる珍しい花です。
暗く湿った場所を好むその花は、別名オルゴールフラワーとも呼ばれています。

花が揺れると音楽を奏でるんです。

『それは良いですね。早速摘みに行きますよ』
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