がらくたのハート
 
ラズが帽子を被り直して言いました。

「今の季節、ここは毒蛇が多いからしっかりオレを守れよ!」

『はい』

毒蛇ですか。ワタシに毒は効きませんからね。咬まれても痛くないです。

えーと、今は春ですからサックス山にいる毒蛇と言えば、カブキヘビですね。
カブキヘビは、黄色の皮と白いたてがみが綺麗な蛇なのですが、産卵期である春はメスが卵を守る為に体内に毒を分泌します。

その毒が危険な代物なんです。

やれやれ、だから危険だと言ったのに。

「ほら、見えて来たぞ。サックス山」

林を抜けたワタシ達は、青々とした自然に守られたサックス山を一望しました。
あまり高い山ではありませんが、鉱山だったと言う事で至る所に横穴や縦穴があります。

ワタシも気をつけなければ。
もしうっかり縦穴に落ちてしまって、衝撃で壊れないとも限りませんからね。

「オレ初めて来た」

『ワタシだって初めてですよ』

この山の地図はデータにありません。歩きながら地図を記録していくしかないですね。

「よし! 山へ入るぞ」

『はい。注意して下さい』

ワタシ達は山の中へ踏み入りました。細い遊歩道から山中へ入り、まずは廃鉱の穴を探します。

カブキヘビの気配にも注意を払って。

手入れが何十年も入れられていない山は、雑草と木が迷路の様に生えています。中にはコブラ草と言う毒草も生えていて、更に注意が必要です。

ラズは短パンなので、毒草が生えている場所はワタシがおんぶして歩きます。

『駄目ですよー。山に行くのに半袖短パンじゃ』

「うるせえな。毒草が生えてるなんてオレ知らねえもん」

『ワタシの背中。痛くないですか? 冷たくないですか?』

「ちょっとな。けど……いいんだ!」



人間は不思議です。嫌なら嫌と言えばいいのに。

けど、ワタシはこうしてるだけで“温かい”気持ちになります。

変です。ロボットがこんな感覚を覚えるなんて。

博士、ワタシは壊れてしまったのでしょうか……。
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