シンデレラは脅迫されて靴を履く
車が走り出したのとほぼ同時に、雅爾さんは呟くように話始めた。
「イギリスでお前を迎えにいこうとがむしゃらになっていて気づかなかった。日本にいるお前が、東宮と九条の板挟みで疲れ果てていたことに…」
あの頃の私…
「側に居てやるべきだった。後悔しても遅いが、始まりが始まりなだけに、俺はちゃんと寄り添ってやるべきだったんだ…
そしてお前は消えた…」
私は運転する雅爾さんの横顔を黙って見つめる。
「三年前帰ってきたらお前だけが消えていた。使っていたマグも、クッションもハンギングチェアも、靴も服も全て残っているのに、お前だけが消えていた…」
「誰に聞いても心当たりがないと言われるか、口を閉ざされる。明らかに知っているであろう兄貴や佐伯ですら口を割らない。
自分で探さないと意味がない…
そう言われている気がした」
「だから…だから探したんですか?
私を…また閉じ込めるために?」
思わず口に出していた。
「違う!!
今度は失敗しないように、失わないように大切にしようとっ!」
雅爾さんがハンドルに拳をぶつける。
気づくともうマンションの駐車場だった。