シンデレラは脅迫されて靴を履く


「副社長…」


「話は部屋で。部屋は何階だ?」


「…15階です」


二人で車を降り、エレベーターに向かう。
沈黙。

はやく、はやく、この空間から逃げ出したい。




「…どうぞ」

「ありがとう」


スリッパを差し出し、雅爾さんを家にあげる。


私の隠れ家。
私の唯一の居場所。

穏やかに暮らせる場所にその暮らしをぶち壊す男を入れるなんて…

フッと自嘲した。


「深桜らしい部屋だな」


「物はあまりないほうが、楽ですので。
副社長、紅茶でもいいでしょうか。生憎、家には紅茶しか置いてないもので」


キッチンに向かい声をかける。


「かまわない。それよりも副社長はやめないか。
もう仕事ではないプライベートだ」


「…私は秘書です。副社長は副社長ですので」


カチャリと副社長の前にカップとソーサーを置く。



「強情だな…深桜」



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