シンデレラは脅迫されて靴を履く
「深桜…」
「はい…」
取った手を引かれ、隣に座る。
「本当に苦労した。どいつもこいつも口を割らない。
辞めているとは思ったが、会社の個人情報保護の固さを恨みもした。
まさか、同じマンション、会社も続けていたとは…」
いなくなろうと決心したとき、手を差し伸べてくれたのは鷹尋さんと、先輩の陽瑠さんと如月さん。
人は焦ると身近なものが見えなくなる。
だから、そのままそこで生活しろと。
あいつは単細胞な生き物だから、きっと周りを探す。
見つかる確率は低いと。
仕事も秘書なら社屋に囲っていられる、個人情報保護も強化してやると。
カモフラージュに陽瑠さんに合鍵を持たせた。彼女なら安心だと。
鷹尋さんはもうあの頃から陽瑠さんに惹かれていた。
秘書課では常に如月さんが、着いてくれていた。
私は護られていた。
見つかることはないと安心しきっていた。
「兄貴が社長に就任してくれて助かった。副社長、引き受けてよかった。打診に来た父さんにこればかりは感謝だ」
「私は絶望を感じた瞬間でした」
「兄貴と俺の就任パーティーでお前を見つけたとき、壇上から飛び降りる勢いだったのをグッとこらえた。
今はまだ、その時ではないと」
鷹尋さんが抜けた副社長の椅子に、雅爾さんが就くと発表されたとき、絶望しか感じなかった。
でも、私は護ってくれた人たちのため強くなろうと誓った。私は強いと。秘書という鎧を着た。
雅爾さんが悪いのではないと、理解はしていた。
悪いのは東宮と九条。
それでもあの時は雅爾さんのせいにするしかなかった…。