仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
私は……まるで花に吸い寄せられる蝶のように、彼の唇にキスをする。
リップ音もない、ただ唇同士が触れるだけの、拙い口付け。
「……へたくそなキス」
王子様は甘く穏やかな表情を、恋心に悶えるように歪めた。
「こんな婚約者様には、キスの特別授業が必要かな?」
本当に幸せそうに、けれど甘く低い蠱惑的な声音で言うと、慧さんは私の髪に指先を絡める。
骨ばった大きな手のひらを、そっと私の肌に滑らせ、唇を塞いだ。
「そうだ。この手紙はなに?」
ベッドサイドにあるテーブルから、一通の手紙を手に取ると、慧さんは悪戯っぽく微笑んだ。
「あああっ! それはっ!」
一ヶ月前に置き手紙をしていたことをすっかり忘れていた。確か内容は……すっごく恥ずかしいことを書いた気がする。
「本物の婚約者さんみたいに過ごしてしまい、ごめんなさい。慧さんのことが大好きでした……って、ふふっ。可愛すぎ」
「だって、帰ってこないつもりで……!」
ベッドの中で音読されて、ひゃあっと耳を塞ぐ。
彼は満足そうに口元を緩めると、サイドテーブルに手紙を戻した。
「もう僕たちは本物の婚約者になったんだ。――当然、結婚してくださいますよね、お姫様?」
「もちろんです……っ!」
彼は王子様のように優雅に私の左手を取り、王様のように高圧的な声音で言うと、意地悪な笑顔を浮かべて私の薬指にキスを落とした。
リップ音もない、ただ唇同士が触れるだけの、拙い口付け。
「……へたくそなキス」
王子様は甘く穏やかな表情を、恋心に悶えるように歪めた。
「こんな婚約者様には、キスの特別授業が必要かな?」
本当に幸せそうに、けれど甘く低い蠱惑的な声音で言うと、慧さんは私の髪に指先を絡める。
骨ばった大きな手のひらを、そっと私の肌に滑らせ、唇を塞いだ。
「そうだ。この手紙はなに?」
ベッドサイドにあるテーブルから、一通の手紙を手に取ると、慧さんは悪戯っぽく微笑んだ。
「あああっ! それはっ!」
一ヶ月前に置き手紙をしていたことをすっかり忘れていた。確か内容は……すっごく恥ずかしいことを書いた気がする。
「本物の婚約者さんみたいに過ごしてしまい、ごめんなさい。慧さんのことが大好きでした……って、ふふっ。可愛すぎ」
「だって、帰ってこないつもりで……!」
ベッドの中で音読されて、ひゃあっと耳を塞ぐ。
彼は満足そうに口元を緩めると、サイドテーブルに手紙を戻した。
「もう僕たちは本物の婚約者になったんだ。――当然、結婚してくださいますよね、お姫様?」
「もちろんです……っ!」
彼は王子様のように優雅に私の左手を取り、王様のように高圧的な声音で言うと、意地悪な笑顔を浮かべて私の薬指にキスを落とした。