仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
どこもかしこも柔らかそうに見える甘い美貌の美人さんだけれど、靴の先まで神経を尖らせているのがわかる。
こうやって廊下を歩いている時ですら輝いて見えた。

「もしかしてお仕事? どこのやつ?」

私の背後にある会議室をチラリと窺うと、媛乃ちゃんは小首を傾げた。

彼女の質問にどきりとする。

クライアント側が『ペルラ』へ依頼した内容やモデルに渡した台本には、必然的に社外秘の情報が多く含まれている。

どこの企業のお仕事を誰が貰ったとかギャランティーは幾らとか、いつどんな媒体で公開するとか、その他の取るに足らない内容だったとしても、お仕事に関する情報交換は一切禁止と事務所の規則で厳しく決められていた。

けれど正直に「規則違反になるから言えないよ」と返答するのは憚られて、私は困惑気味に眉を下げる。

「まだ決まったわけじゃないから……どこのお仕事とか、言える段階じゃなくて」

私は口元に曖昧な笑みを浮かべて、やんわりと言葉を濁した。
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