仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「ウェディングに対する期待や不安、喜びや気恥ずかしさを、もっと愛情深く表現できないの? 今の君にはまったく感動できない」
彼は苛立ちを抑えるように亜麻色の髪を掻き上げた。
背をもたれていた壁から離すと、こちらへゆっくりと歩み寄る。
彼が長い足を捌くたびに、革靴の音がコツコツと響く。
誰もが口をつぐみ物音を立てないようにしている空間の中で、小さなはずのその音だけが嫌に耳についた。
常盤社長は私の目の前まで迫ると、誰もがうっとりするような蠱惑的な笑みを浮かべる。
私の耳元へ唇を寄せ、そして。
「――君の実力ってその程度? なんだか、がっかりしたよ」
長い睫毛の下で、冷え冷えとした眼を細めた。
突然飛び込んできたような私にお仕事をくれて、『期待しているよ』と言ってくれた王子様を、こんなにも失望させてしまうなんて。
凍てつくような彼の視線に、心臓が掴まれたようにひゅうっと喉が詰まる。
「わっ、わたし、まだ、やれます。もっと頑張れます!」
この人だけは失望させたくない!
そう思って慌てて言いつくろうも、常盤社長は軽く握った指先で口元を隠しながらクスリと失笑する。
現場の空気は困惑に包まれている。
そんな中、ディレクターさんが「一旦撮影を中断します。新郎新婦役のお二人は休憩室へ行ってください」と指示を出した。
彼は苛立ちを抑えるように亜麻色の髪を掻き上げた。
背をもたれていた壁から離すと、こちらへゆっくりと歩み寄る。
彼が長い足を捌くたびに、革靴の音がコツコツと響く。
誰もが口をつぐみ物音を立てないようにしている空間の中で、小さなはずのその音だけが嫌に耳についた。
常盤社長は私の目の前まで迫ると、誰もがうっとりするような蠱惑的な笑みを浮かべる。
私の耳元へ唇を寄せ、そして。
「――君の実力ってその程度? なんだか、がっかりしたよ」
長い睫毛の下で、冷え冷えとした眼を細めた。
突然飛び込んできたような私にお仕事をくれて、『期待しているよ』と言ってくれた王子様を、こんなにも失望させてしまうなんて。
凍てつくような彼の視線に、心臓が掴まれたようにひゅうっと喉が詰まる。
「わっ、わたし、まだ、やれます。もっと頑張れます!」
この人だけは失望させたくない!
そう思って慌てて言いつくろうも、常盤社長は軽く握った指先で口元を隠しながらクスリと失笑する。
現場の空気は困惑に包まれている。
そんな中、ディレクターさんが「一旦撮影を中断します。新郎新婦役のお二人は休憩室へ行ってください」と指示を出した。