仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
色っぽい声音で低く吐息をはくように囁かれて、耳朶がじわじわと蕩けるような感覚を覚える。

顔が赤く染まる熱を感じる中、私は慌てて耳を押さえつけた。



促されるように階段を上がり、二階のお部屋へ案内される。

「僕の好みで色々用意しておいたんだ」

書斎の隣にあるゲストルームの扉を彼は部屋の内側に押し開けた。

「このゲストルームの物は全て君へのプレゼントだから。自由に使って」

広々とした三十平米ほどの室内には、白を基調としたお洒落な家具やベッドが設置されていた。
まるでホテルの一室のように何もかもが整ったゲストルームだ。

「あの扉の向こうはウォークインクローゼット。好きなものを着たらいい」

ベッド一台が悠々と入るような空間には、ハイブランドのカジュアルなワンピースからドレスまで、色々なお洋服が掛かっている。
可愛いデザインのハイヒールも、ヒールの高さ別に何足も並んでいた。

「こ、こんなに沢山!」

全てがお洒落で高級感にあふれている。そして、今日『エテルニタ』のフィッティングルームで見たものに似ていた。

どうしよう、衣装ならまだしもプレゼントだなんて。着て行く場所だって無いし貰う理由がない。

「もったいないです、私なんかに、こんな! お給料も支払ってもらうのに……」
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