仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
しかし自分の荷物がバッグひとつだけということを思い出した。
必要な物があったら今言わないと、恥ずかしくなって後から言いにくいかもしれない。

ゲストルームに戻ると、恐る恐る室内探索を開始する。
ドレッサーの前には外資系ブランドの化粧品が並べられ、その横にはキャビネットがあった。

「そうだ。そこも開けてみて」

「この中にも何かあるんですか?」

キャビネットの引き出しを開くと、上質なレースがふんだんに使用された甘い下着がギッシリ詰まっていた。

「きゃあ!」

思わず叫んで仰け反る。

だだだ誰の下着!? やっぱり女性をよく招待してるんだ……!

「おっと。そんな非難するような顔で僕を見ないでくれる?」

「非難なんかしてませんっ」

「じゃあ妬いてるの? 可愛い」

「か、からかわないで下さい!」

「安心して、これは今日購入したばかりだから」

常盤社長は臆することなく飄々と答えた。
こんなに可愛くてセクシーな下着が沢山あれば、女性の私だって平静ではいられないのに。

彼は私に腕を伸ばすと、強引に彼の身体の方へ抱き寄せた。

「わっ! と、常盤社長」

密着する身体を慌ててよじる。けれども彼はビクともせず、王子様のような端麗な美貌に憂いをのせる。
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