嘘ごと、愛して。

「今さら付き合ってなんて遅いかもしれないけど、考えてみて」

活気溢れる眼差しが今は少し揺れているような気がして、首を縦に振りたくなる。


けれど最初から、答えは決まっていた。

このはつ恋は実ってはならない。



「私、どうしてもやりたいことがあるの…今は、付き合えない」


前方に並ぶカップルの笑い声が聞こえた。
額がくっつきそうな至近距離で笑い合っている。
楽しそうで幸せそう。
羨ましくないと言ったら嘘だけれど、ぎゅっと正義の手を握る。



「その時がきたら、私から、付き合ってて言わせて」


その時がきたら、真凛から、付き合っててーーそう言えばいい。

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