嘘ごと、愛して。


握った手を、正義は両手で包んでくれた。

「俺には言えないことなの?」

「今は言いたくない」

頭の良い裕貴が彼を犯罪に巻き込むなと助言してくれてよかった。話さないという点で心は揺れない。なにがあっても、話さない。そう決めた。


「この間の"好き"は嘘じゃないよね?」


「…はい」


正義の寂しそうな顔に申し訳なさが募る。
どうして、真凛の時に同じ言葉をくれなかったのだろう。
もしも正義が真凛を守ってくれたのならーーそしたら、私たちの仮初めの出逢いもなかったよね。


この気持ちを知らずに済んだのに。


「了解。待ってる」

「ありがとう」

「けど、俺のわがままもひとつ聞いて?」


ひとつ、くらいなら。
私にも叶えられるかもしれない。

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