嘘ごと、愛して。

先生の悪口や最近話題のテレビ番組など他愛のない話をして、待ち時間を過ごした。

正義の予想通り1時間程で店内に通される。


扉を開けると既にカカオの香りが充満していて、チョコレートのマスコットキャラクターが壁や天井に描かれていた。

茶色のテーブルクロスは高級感に溢れていて、正義と向かい合って座る。



「飲み物どうする?」

「そうだねー、パフェに合うのってどれだろ」


ひとつのメニューを二人で覗き込む。
少し憧れていた光景だ。


「俺はチョコレートラテで」

「甘いのと甘いのだよ?」

「俺、甘党だから」

「クラスの女の子のクッキーは断ってたくせに?…私、キウイフルーツにする」


美香ちゃんだっけ。


「貰うくらいだったら自分で買うわ」

正義は店員にパフェ2つと飲み物を注文してくれた。心なしか店員の対応は、正義だけに丁寧だった。


「だったらいらない、って言えば良いじゃない。ちゃんと断らないと、また次もあるよ?」


そういう曖昧な態度が、相手を期待させるんだよ。


「あんまり波風立てたくないよ。晴人の時と同じ過ちは繰り返さないから」


「……」


クラスの女子との固執。
真凛と晴人さんの付き合いを良しとしない女子生徒からの嫌がらせ。
それをきっかに真凛と晴人さんの心の距離が開いてしまったのだ。
そのことを分かった上で、正義は私を思って行動してくれている。

「…ごめんなさい」

生意気な意見を言ってしまって、ごめんなさい。
正義は真凛と晴人さんの苦しむ姿を一番近くで見てきたんだね。


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