嘘ごと、愛して。

「これめっちゃ美味い!」

「豚骨?」


ラーメンの良い香りがする。
そういえば、お昼まだだったな。


「スープが本格的。飲んでみろよ」


正義にカップラーメンを差し出される。

あの名店の豚骨スープを再現!
そんなキャッチフレーズでコンビニに売っていて、気になっていた。


「ありがと」

受け取る。
友達同士で一口交換、なんていうことはよくある話だ。私にはそんな友達ひとりもいなかったけど。


「ん!思ってたよりあっさりしてて美味しい」


カップラーメンの縁のどこに、正義が口づけてスープを啜ったかは分からない。
パンをかじられたこともあったせいか、不思議と抵抗がなかった。


「村山、お昼は?」

「食べ損ねちゃった」

「なんで?」

「…ちょっとね」


あの写真のことを裕貴に問い詰めていたなんて、口が裂けても言えない。


「どうせ授業サボるなら、外、食いに行く?」

「はい?」

「今どこもランチタイムだろ?安くて美味いもん食えるよ」


手に持っているカップラーメンは大分減っている。

「アンタはコレ食べたじゃん」

「それだけじゃ足りないって、俺も思ってたとこ」


もう明日から、真凛の代わりをする必要はないのかもしれない。

もしかしたら正義と逢うことは今日で最後かもしれない。


「……行く」


最後に、悔いの残らないよう、正義の好意に甘えることにした。


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