沈黙する記憶
「あら、千奈ちゃん。その服ずごくよく似合うわね。一瞬杏かと思って驚いちゃった」


そう言うお母さんにあたしはしまったと感じた


一旦帰って着替えをしてくるべきだっただろうか。


「ごめんなさい。急いでいたので、このままの格好できちゃって……」


「いいのよ、大丈夫だから。その服もなにか杏の為に役立つ事に使ってくれたんでしょう?」


穏やかな表情を崩さずにそう聞いてくるお母さん。


その言葉に胸の奥がジワリと熱くなり、鼻の奥がツンッと痛くなった。
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