浮気の定理
目の前には彼がいる。



私はそれをそっと両手で押しやって、この場から逃れようとした。



刹那――



逃れようとしていた私の体は彼の胸に収まり、いつの間にか唇を奪われていた。



あの日の触れるだけのキスなんかじゃなくて、もっと深く甘美なキス。



腰と後頭部に回された手は、私を逃すまいとギュッと引き寄せられる。



もう何も考えられなかった。



体の力が抜けていくのがわかる。



気が付けば彼のキスに応えてる自分がいた。



鳥肌が立つほどの快感は、人生で始めての経験だった。
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