浮気の定理








「ねぇ、山本くん」



「なに?」



「わかってるとは思うけど、桃子に絶対言っちゃダメだよ?」



ちょうど桃子がトイレに立った隙に、私は改めて山本に釘を指した。



途端に面白くなさそうな顔をした山本が、すかさず文句を言ってくる。



「あのさ、さっきだってちゃんとフォローしたろ?

ひどいなぁ、真由ちゃん。俺、そんなに信用ない?」



「いや、そんなことはないけど……

桃子に可愛くねだられたら、ポロっと言っちゃうんじゃないかと心配になって……」



上目遣いでそう言えば、山本はますます心外だと言わんばかりの勢いでこちらを軽く睨んだ。
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