浮気の定理
「な、なんでもない!」



桃子の登場に焦りながら、私は思わず顔を背けた。



「なに?山本になんか言われたとか?」



その声は明らかに、からかってるような含みがある。



「なんにも言われてないって!あ、すいませ~ん!同じものお願いしまぁす!」



バーテンダーの彼にすかさずそう言うと、かしこまりましたと、いつもの笑顔をこちらに向けられた。



「あ~逃げたな?真由」



「もう、いいから桃子は山本くんとしゃべってなよ」



山本を挟んであちら側とこちら側で、やいやい言い合っていると、ストップと山本から声がかかった。
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