浮気の定理
それから急いで立ち上がり、玄関へと向かう。



もちろん、山本を水落に会わせないためだ。



間一髪で山本を玄関で食い止めて、急いで靴を履くと、彼の背中を押して二人で一緒に外に出た。



「真由ちゃ……」



「しっ!」



山本が私の名前を呼ぼうとするのを、人差し指を唇に当てて制する。



それから足早に階段を降りて、アパートからなるべく距離を取った。



しばらく動けないとはいえ、もしかしたら追ってくるかもしれない。



「山本くん、車?」



されるがままにあとを着いてきていた山本が、そう聞かれて小さく頷いた。
< 536 / 730 >

この作品をシェア

pagetop