浮気の定理
涼子の選択②
――ピンポーン



玄関のチャイムが鳴る。



――誰だろう?こんな時間に……



まだ朝の10時を回ったばかりだ。



首を傾げながらインターフォンへと向かう。



花を幼稚園に送ってから、家事を一通り終わらせて、ホッと一息つく時間。



そんな時間の来訪者など、普段は滅多にない。



「はい」



ボタンを押してそう言いながら画面を確認すると、そこには今、もっとも会いたくない人の顔が映し出されていた。



「あ、涼子?私、ありさだけど、今……ちょっといいかな?」



LINEでも電話でもなく、なぜ直接家を訪ねて来たんだろう?



ここまで来ているのに、追い返すわけにもいかなくて、ありさに聞こえないように小さく溜め息をついた。
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