浮気の定理
「ちょっと待った!真由、まず荷物をまとめなきゃ

涼子、まだ用意してないんでしょ?」



そう言われて驚いた。なぜわかったんだろう?



目を丸くする私を見て、桃子はにっこりと微笑む。



「こういう時ってね?いろんなことに頭が回らないものなのよ

私もそうだったからさ?電話、してくれただけで充分!」



桃子にもそれほど辛い時があったんだと、今更ながらに思う。



そして自分は手を差し伸べてあげられなかったのに、こうして助けに来てくれたことを申し訳なく思った。



「私……桃子に何もしてあげられなかったのに……」



引かれていた手をグッと戻して立ち尽くしながらそう言うと、桃子が大きな溜め息をついた。
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