散る桜
21


***

あの頃のわたしが一番信頼していたのは、優しい祖母ではなく、ヒトではないモノの雰囲気をまとった彼だったのは、事実だ。


大人たちがわたしに、生きることを強要する中、彼だけが、死にたいなら死ねばいいと、笑いながら言った。

本音を漏らすことのできる、唯一の相手だったように思う。


「生きたいだけ生きて、死ねばいい。しずかのことは、俺が迎えに行く」

「いますぐでは、いけないの?」


「七日は七日だ。待たねばならない」


七日の間、彼が何を待っていたのか、結局わたしに教えてくれることはなかった。だからわたしは、推測することしかできない。
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