散る桜
36


「わたしが来なければ、あなたはここで一人きりでしょう」


「しずかに心配されるだなんて。俺も落ちぶれたものだな」

彼は皮肉気な口調で、にやっと笑った。言葉はいつも、心と裏腹だ。


あなたは誰を待っているの?と尋ねたら、彼は答えてくれただろうか。


彼はわたしの帽子を見ながら、しずかには白の方が似合うと、目を細めた。

白いリボンの麦わら帽子は、昔、おばあちゃんが使っていたと、初めて散歩に出た日に聞いた。

デザインは古かったが、わたしは気に入っていた。
< 36 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop