散る桜
37


あの帽子は、どこへ行ってしまったのだろう。大切にしていたものから順に、失っていく。

しいちゃん、お帽子被りなさいねと言う祖母の優しい声が、耳の中で聞こえた気がした。


「しずかは、まだ死にたいのか?」

彼はわたしから目をそらして尋ねた。


わたしにとって、死は甘美な誘惑だった。

だった。過去形だ。

本音で彼と向き合ううちに、誘惑はだんだん薄くなり、それでも消えてしまいたいと願うのは、彼女を救えなかった罪を贖いたい、自分のための言い訳に過ぎなかった。



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