散る桜
43


祖母は苦しげに眉を寄せ、目を閉じた。

「おばあちゃん?」


「……。しいちゃんが逢ったのはね、ヒトととは違う、ケガレビトなのよ」

祖母は少しのあいだ沈黙してから、指で空に『忌人』と書いた。


「おばあちゃんも昔、会ったことがあるの。忌地に山桜が咲いていたでしょう?おばあちゃんは見たのよ。ケガレビトの腕の中で、姉さんが山桜になったところを」

「姉さん?」


「そう。おばあちゃんのお姉さん。あれは、夢だったのかも知れないわ。でも、姉さんはあの日から、帰ってこない。忌地に引かれたのよ。……おばあちゃんの代わりに」
< 43 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop