秘密の会議は土曜日に
「夜くらいは俺の腕の中にいてよ。

理緒も、俺を好きなんでしょ?」


「そ、それはもちろん、そう、

なんですけど……高柳さんのベッドで一緒に寝るのは」


「宗一郎」


眉をしかめて訂正されるので、「宗一郎さん」と言い直した。名前を呼ぶだけなのに、自分でも意外なほど消え入りそうな声しか出ない。


この私の見識が正しいなら、今は擬似的な結婚の最初の夜なので、それは拡大解釈すると結婚初夜ということになるので……


まさかこれから、あんなことやこんなことをしたりするんだろうか!?


「う。」


頭の中にやらしい妄想が繰り広げられたので慌てて打ち消す。高柳さん……じゃなくて、宗一郎さんの前で何考えてるの私の変態!!



でも宗一郎さんは、どう思ってるんだろうか?例えばこの私に、そういう気分になったり……するのかな?

もし、そうならそれは凄く恥ずかしいと同時に嬉しいことのような……


「だぁあああー!!」


そんなことあり得ないから!

余りにもあつかましい妄想。今の私の頭を覗かれたら恥ずかし過ぎて生きていけない。



「急にどうした?

まあ、何を心配してるかだいたいわかるけど、」


「ええ!?わからんでください!!

ちちち違いますから、変態じゃありませんから!」


クスクスと笑われたので必死に弁解すると、吹き出されてしまった。まさか本当にさっきの妄想を全部覗かれたんだろうか!?宗一郎さんはたまに異能力を発揮するからあり得ない話じゃない……!


「いくら俺でも、そんなに緊張して身構えてる理緒を襲ったりしないよ。

それに理緒がそういう格好してると、まるで中高生でも補導してきたような気がするから……」


「これ、変でしたか?」


パジャマの代わりに愛用してる緑のジャージ。中学校の指定のもので背中には「3-B 田中」とマジックで書いた布が縫い付けられてる。


お風呂上がりに着替えると宗一郎さんが不思議そうな顔をしてたけど、一般的には中学のジャージって再利用しないのかな。


「わりと似合ってるし、出会った頃を思い出してある意味安心するんだけど。

でも今日はこっちに着替えて。」


宗一郎さんがクローゼットから取り出した私服のシャツを借りて着替える。大きいのでこれ一枚で足りそうだ。


「うん、やっぱりこの方がいい。可愛いよ」
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