仮面のシンデレラ


急に、さっきまで自分を支えていた自信の炎が弱まっていく。


キキキキキ…


異様な森の音が、さっきよりも大きく聞こえた。

“1人きり”という現実が、私に重くのしかかる。

はっ、と、事の重大さに気がついた。

私は今、“薄暗い命の危険がある森の中”で、雨に打たれながら、“1人”で、“道に迷っている”。


(もしかして、迷子になったのチェシャじゃなくて私なんじゃ…?)


さぁ…、と顔が青ざめる。

もちろん、数日前まで普通の女子高生だった私は、樹海を歩いた経験などない。

加えて、ここは“未知の世界”。

周りの環境も、ここに住む生物も、私のいた人間界とは違う。

私の持ち合わせる“常識”が、ここでは通用しないのだ。

私は、辺りを見回して足を踏み出す。


サク…!


雨のせいで、地面がぬかるんで歩きにくい。

空から降り注ぐ雫で体温が奪われる。


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