仮面のシンデレラ


その時。

ふいにチェシャの姿が浮かんだ。

私は、ぐっ!と地面を踏みしめる。


(ここで止まるわけにはいかない。…何としてでも、チェシャを見つけなきゃ…!)


折れそうな気持ちを立て直し、一歩、足を踏み出した

次の瞬間だった。


ドォン!!


(?!!)


突然。

近くの大木に雷が落ちた。

びくん!と跳ねる体。

私が目を見開くと同時に、雷に打たれた大木の枝が私に向かって倒れる。


(!!)


とっさに、体を反転させて枝から逃れた。

枝を避けることにしか思考が働かない私は、森の地形など気にする余裕はなかった。


ズルッ!!


「ひゃ…?!」


体重を支えていた足が、ぬかるんだ土に取られた。

そのままぐらり、と体が傾く。

その先にあったのは、底が見えない急斜面。

支えをなくした体が、重力のままに落ちていく。


(嘘…っ?!!)


命の危機を感じた瞬間。

私の体は木の葉を巻き込むように、勢いよく転がっていったのだった。


ドッ!!


「っ!」


着地点の大木の幹に体が打ち付けられた痛みが全身にはしる。

そして、私の意識は、ぷつり、と途切れたのだった。


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