なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
ため息をついたとほぼ同時にインターホンの音が家中に響き渡る。
深侑が帰ってきたの?
でもいつもインターホンなんか押さずに普通にドアを開けて入ってくるのに。
インターホンの音に誘われるように玄関へ向かう。
「…深侑?」
「ごめんね?深侑くんじゃなくて」
ドアを少し開けて外を見ると、そこにいたのは深侑じゃなかった。
相変わらず整った茶髪の髪は、前より少し伸びた気がする。
「…翼くん?」
「夏生ちゃん。久しぶり…でもないか」
「先月も会ったもんね」
翼くんは笑って私の頭に手を置いた。
その表情を見て私も釣られて笑った。