なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
「…夏生……っ」
「…み、う……」
透き通る声でもう一度名前を呼ばれた。
その声がすることが信じられなくて振り返っても、その姿があることすら信じられなかった。
どうして…どうして深侑がここにいるの?
どうして…どうして深侑の姿を見て私は安心しているの?
「…え、なんで……」
知らぬ間に流れ出した涙に驚く。
泣く理由なんてないのに、涙が止まらない。
自分の感情が分からない。
深侑に泣いてるところを見られたくなくて、深侑に背中を向ける。
吹いていた追い風が止んだと思えば背中に感じる温もり。
「……深侑?」
「前もこうやって夏生を抱き締めたの、覚えてる?」
「……う、ん…」