なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
あの時は確かお姉ちゃんの命日が近くて、深侑が悲しくて私を抱き締めてきたんだった。
「…夏生が茜のことで悲しんでると思って、俺が支えてやりたくてあの時はこうしたんだよ」
「……え、…」
深侑が悲しくてしたんじゃなかったの?
「俺が寝不足だったのは、夏生が一人になった時に泣いてるんじゃないか、悲しんでいるんじゃないかって考えると眠れなくなってたから。
茜の命日なのに夏生に誕生日プレゼントを渡していたのは、茜に好きな子の大切な日は忘れずに祝うことって言われてたから」
「……好きな子……」
私が思っていたことと深侑が考えていたことが全く違った。
そして深侑が全てお姉ちゃんのためだと思っていたことは、全て私のためだったの?
それに好きな子って……
深侑の腕が離れて体を深侑の方へと向かされる。
いつの間にか涙は止まっていて、わずかに目尻に涙が残っている。