キライ、じゃないよ。
なんて、バカみたいに喜んでる場合じゃない。
護に何かがあったのは事実らしい。
「俺も何度も連絡を取ってるのに、全然繋がらないんだ」
『……護、樫くんの電話に出ないの?』
「それって……俺の電話にだけって聞こえるけど?」
『あの子……一体どうしちゃったの?』
俺に連絡を取ることで謎が解けるかと踏んだようだが空振りに終わったようで、幸島は途方に暮れている。
「俺、今から護の病院に行こうと思う」
『あぁ、だめだめ!護、今日は日勤だからもう家に帰ってるはずだよ』
『じゃあ、場所教えてくれよ。この期に及んで俺には教えられないってことはないんだろう』
『いくら樫くんでも……だけど、護を救えるのも多分樫くんだけかもしれないから、教える。護の怒りも甘んじて受けましょう』
幸島はすぐに無料メールアプリに地図情報を送ってくれた。
会社の駐車場で急いで車に乗り込み、エンジンをかける。
サイドブレーキを解除した直後、目の前に人影が飛び込んできて、俺は慌ててブレーキを踏み込んだ。
「な、なんなんだっ!」
パワーウィンドウを下げて、その人影に向かって叫ぶ。
「危ないだろうが!死にたいのかよ!」
バンパーに手をつき、必死に訴えかける形相でそこにいたのは田淵だった。