キライ、じゃないよ。
「な……田淵、お前なんなんだよ」


いつもいつも、護に近づこうとすると邪魔が入る。

仕事だったり、こいつらだったり。

いい加減腹立たしくもなる。

運転席側へ回ってきた田淵が躊躇いつつも口を開く。


「樫くん、聞いて。私、樫くんが傷つくのを黙って見ていられないの」

「は?何言ってるんだよ。とにかく今急いでるから、退いてくれ」


相手にすることすら煩わしいと思った。

今は誰よりも早く護に会いに行きたいのに。


「樫くんっ!私のことは嫌いでもいいよ。でもお願いっ。話だけ聞いて……」


普段おとなしい田淵の必死の形相に、怒りを通り越して呆れた。

仕方なく田淵の話を聞くことにして車の外へ出た。

車には乗せたくなかった。

ナビシートはこの前護が乗った。もう彼女以外にその席に誰も座らせたくない。


「車の中じゃあダメ?私ちょっと風邪気味で……」


田淵ってこんな風に遠慮のない人間だっただろうか?まるで原川のようだと思った

今日は原川の姿はないんだな。いつもセットのように感じていたから、なんだか不自然にも感じる。

仕方なく後部座席に並んで座った。
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