キライ、じゃないよ。
「ここが、俺のウチで、す」


見上げれば煉瓦色ののアパートが2棟並んでいた。


「樫が、今住んでるところ……」


築年数が新しく見える、オシャレな外観に思わず溜息がこぼれた。

もっと単身向けの飾り気のないアパートを想像していた。

私が住んでいるところの方が、もっとずっとシンプルだ。


「勢いに任せてここまで連れてきたのは、勿論護と話をしたかったからだけど、」

「?」

「護が、田淵とのことで俺を疑ってる今、部屋に上がるのって抵抗あるんじゃないかと……」

「そ、それを言うなら私だって……」


私だって、八田くんとの事をまだ樫になんの話もできていない。


「うん。護の話は見当がついてるからいいんだけど……てか、実は地味にムカついて凹んでるしな」

「……っ、」


やっぱり、田淵さんにあの写真を、見せられたんだ。


「だから。寒いし、何のもてなしもできないけど、ここで話すしかないのかなって……」


「ん、」


ここまで来たんだもの。もう後戻りはできないし、逃げるつもりもない。

全部話して、樫の言葉を待とう。


お互いにシートベルトを外して、樫はシートを後ろに押してスペースを広く取った。

私はそのままの姿勢で、樫の方を見ることもできずに、俯いたまま口を開いた、

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