キライ、じゃないよ。
「迂闊、だろ」


話し終えるまで口を挟まずいてくれた樫からの第一声はこれだった。

迂闊、と言えば迂闊だったと思う。

樫に言われた通りに、タクシーを拾って帰るべきだったし、田淵さんの家に上がったことも、多分ストーカーのことを口にして田淵さんに嫌な思いをさせたことも。

そして、それは樫の事を好きな田淵さんの、私への憎悪を大きくさせたに違いない。

だからってあんな行動に出ることは間違ってると思うけど。

八田くんまで巻き込んでしまったし。


「全部、原川の仕組んだ事だって分かったけどな。それでも気分悪い。正直俺は八田に対してムカついてるし、護だって田淵の事で俺に対して不信感持ってるだろう」

「た、田淵さんと抱き合ってたの見ちゃったし……」

「見てるなら最後まで見とけよ」

「は?見てられるわけないじゃない、あんなの……」

「見てれば分かったのに。俺がアイツにどんな酷い言葉を吐いたのか、アイツの顔を見てたら分かったはずだから」

「え?」


一瞬、樫の言った言葉が理解出来なかった。

あんな風に抱き合っていた直後に、樫は何を言ったと言うんだろう。


「しかも、抱き合ってないし。一方的に抱きつかれただけで。あー、アイツの化粧臭さスーツに残ってるみたいで気持ち悪い」


スーツに鼻を当ててスン、と嗅いだ後、樫は大袈裟なくらいにスーツを払った。

な、何てこと言うんだこの人は。

相手が田淵さんだとしても、一瞬同情してしまった。


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