キライ、じゃないよ。
「だって、護言っただろ?『キライじゃない、その逆』だって。でもって、俺の告白聞いてくれる気だったよな?」

「言った、ね。うん。でもって、聞く気だったよ、うん」


あの焼肉屋の駐車場でのことを思い出すと、顔が火照って熱を持つ。

樫はあの時の私の言葉をずっと信じて待っていてくれたんだって思うと、振り回されて余裕がなかった自分が情けなくなる。

私は、田淵さんとのことを疑ったのに。


「……自信のない護ちゃんに、ちゃんと説明するけどな?俺、結構一途だよ。護に告白もどきしといて他の女にまで優しくできるほど器用じゃないから。護が田淵とのこと、まだ信じきれないんだったら、俺どれだけ時間かけても護が納得するまで話す。なんなら田淵や原川引っ張ってきてでも……」

「わ、分かった!分かったから、もういいよ。樫の言葉を信じる。田淵さんとは、なんでもないんだよね?……これで、いい?」


樫の勢いに飲まれそうにって、慌てて声を上げた。

この調子だと本当に田淵さんや原川さんを呼びかねない。

樫の言う通り田淵さんにヒドイことをしたのなら、彼女にとってそれはさらなる苦痛だろう。
もう許して上げてほしい。


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