キライ、じゃないよ。



「いつもいいところで邪魔が入ってたからさ……なんていうか、こんな風にちゃんと言えた事に感動してる」

「邪魔……確かにそうだったね。でも嬉しい。樫の気持ち聞けて、幸せだよ私」

「俺も……ん?てか、俺まだ護の気持ち聞けてなくね?」

「え?そ、そんな事ないんじゃない?ほら、えーと……」


言ったような、言ってないような……。


「じゃあ、どうぞ」


言え!と言わんばかりに詰め寄ってくる樫。


「ほらまた焦らす」

「じ、焦らしてな……」


あ、既視感。

確か、この前もこんな風に迫られて……。


「言おうとしたけど、樫が……」

「ん?俺が、なに?」


気付けば樫の顔が目の前にあって、まるであの日の記憶の再現ビデオ見てるみたい。


「顔、近いよ」


ジリジリと迫る樫から、身体が自然と逃げる。だけどすぐ後ろにあるソファのせいで逃げ場を失ってしまった。


「護、キス……するよ?」


触れ合う寸前に問われて、答える間も無く唇を塞がれる。

いいって言ってないし!

心の叫びは樫に聞こえるはずもなく、樫の唇は2度、3度と啄ばむように唇に触れてきた。

合間合間に視界に見える樫の熱っぽい視線に、胸の奥が熱く疼く。

知らず溢れた吐息を拾うように、樫の唇が重なり、口内へ滑り込んできた舌は軽く私の舌先だけを絡ませては離れていく。



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