キライ、じゃないよ。

髪を優しく撫でられている。

そんな優しい手の温もりに意識が引き上げられた。

ゆっくりと開けた視界に見えたのは、太陽の光と、それを背負う樫の穏やかな微笑み。


「おはよう」

「お……は……んんっ、」


何故か声が掠れてうまく喋れない。

軽く咳がこぼれて、まるで大きな声を出し過ぎた後みたいだと思った瞬間、一気に理由が分かって恥ずかしくなった。


「ごめんな、俺。余裕なくて……身体平気?」


一晩過ごした相手に体を気遣われることが、無性に恥ずかしくて仕方ない。

今、布団の中の自分が何も着ていないことも。

どうして昨日の夜は平気だったんだろう。

樫に裸を見られるなんて、正気に戻ったら恥ずかしすぎて軽く死ねる。


「護?」


恥ずかしさに頭を抱えてどうしたらいいのかと悶絶している私をどう思ったのか、気付けば樫に向き直らされて、目の前には何も身につけていない樫の体がある。

そして、私も露わになった胸が樫の目の前に……。


「や、やだ!」


樫の胸を両手で思い切り突いて、布団の中に潜り込んだ。


「護?」


樫の不安げな声に我に返った。

布団から頭を出して、樫を見上げる。案の定傷ついた様子の樫と目があった。




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