彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)
返却されたテストを見る。
(平均は・・・・97点前後かな?)
トラブルに巻き込まれた割には、点数はとれたと思った。
「今回はみんなよく出来てたぞ!間違えたところは、しっかり覚えるようにな!?以上!解散!」
声の大きい熱血な先生の号令で、教室の中は賑やかになる。
「菅原さん。」
帰ろうとしていたところで声をかけられる。
同じクラスの女子だった。
「なに?」
「あのー・・・数学の問い5って、できた?」
「うん。」
「お願い!教えてくれないかな・・・?」
「いいですよ。」
期待を込めて言ってくる相手を無下には出来ない。
「ありがとう、菅原凛さん!」
笑顔で答えれば、大げさに私をフルネームで呼ぶ。
「ここの数式は、ややこしいよね?」
「ホント、助かる~菅原さん、教え方上手だもんね?」
「そうかな?」
「そうだよ!教え慣れてる感じがする!」
「そ、そう・・・?」
確かに、友達の夏休みの宿題を見てはいるけど・・・
(『菅原凛』さんじゃなくて、『凛道蓮』としてだけどね。)
凛道蓮というのは、愛する人と会う時の姿。
本当の私は、地味な高校生・菅原凛。
塾の夏期講習に真面目に通う子を、誰が最強暴走族の4代目総長だと思うだろうか。
〔★性別が違う時点で結びつかない★〕
「ねえ、菅原さん、どういう勉強方法してるの?」
「なにかコツとかある?」
「え?」
気づけば、他の子達も私の周りに集まってきていた。
みんな大人しい子ばかりだ。
学校でいじめられている私にとって、一般人と・・・菅原凛としてまともに会話ができるのはこの時ぐらい。
「・・・特別なことはしてないよ。」
「じゃあ、勉強は何時間ぐらいするの?夜型?朝型?」
「朝型かな?その方が、頭に残りやすい気がする。」
「えー!?じゃあ、私も朝型にしよう!」
「あたしも!」
(平和だな・・・)
同級生の会話を聞きながらしみじみ思う。
(こんな平和を、瑞希お兄ちゃんにも味わってほしいけど・・・)
―あんたのアニキがあたしから陽翔を奪ったのよ!?―
(あんなんが出てきたからな・・・!)
暴走族とかストーカーヤクザとか合コンとかお化けとかにも困ったけど、なんとかなった。
(でも、死人がらみ、ましてや2代目の人間関係でのトラブルは・・・)
「かえで、あんたまたそんな問題でつまずいたの?」
「レイちゃん。」
その言葉で我に返る。