彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)
(ただでさえ、私の学費で大変だっていうのに・・・)
親には感謝しなければいけないのだろう。
将来を選択できるルートにしてくれたことに。
仮に公務員試験がダメでも、大手企業に就職できるように・・・その肩書きとして、あゆみが丘学園を選んだのだから。
(まあ、おかげで、瑞希お兄ちゃんといる時間が増えたんだけどね。)
今夜も少しだけなら寄れるかな?
そんな期待を込めて、進路を瑞希お兄ちゃんの方へと変えたのだが・・・・
「馬鹿野郎、岩倉!」
「すみません、バラさん!」
「っ!?」
それは本当に突然の出来事だった。
進行方向にあったコンビニから、彼らは現れた。
「目を離すなって言っただろう!?」
「だって、相手は小さかったから~」
「だからこそ、見失いやすいんだよ!気をつけろ!」
「す、すみません!」
聞き覚えのある声とやり取り。
「気をつけますよ、フジバラさーん!」
(おじさんだ・・・!)
凛道蓮を追っている警部補さんとエリートらしい若い刑事さん。
(なんでこんなところに!?)
見られたらマズい!
逃げなきゃ!!
道を変えようとして思い直す。
ん!?いやいや、待て待て!
(相手は、菅原凛を知らない・・・だったら、逃げることもないんじゃないかな?)
そう思い直し、知らん顔して通り過ぎようと決める。
「くそ!さっさと片づけてぇのに!」
「そうですよねーこのタイミングで、龍星軍が集会でもしたら追えませんからね~」
(え?)
どういうこと?
(龍星軍を追えないって・・・・そういう状況なの?)
挙動不審になりそうなのを我慢して聞き耳を立てる。
ゆっくりとした足取りで、出来るだけ会話が拾えるように彼らの横を通る。
「MESSIAH(めしあ)が無茶してるのって、龍星軍が原因ですよね?幡随院に何とかさせた方が早いんじゃないですか?」
「ガキに頼れって言うのか!?」
(めしあ・・・?ちーちゃん?)
「二度とそんなこと言うなよ、ボケ!」
「す、すみませーん!」
どういうことかわからないまま、私は彼らの横を通過した。
(なにかあったの・・・?)
いや、訂正。
(きっと、何かが起きてるんだわ・・・)
振り返れない背後を気にしながら思う。
これは、瑞希お兄ちゃんに相談案件だと確信した。