明日死ぬ僕と100年後の君
「かわいそう。へぇ、同情か」
頭を抱えたくなった。
言葉というのはどうしてこうも、複雑で、扱いが難しいんだろう。
もっと間違いなく、過不足なく、自分の気持ちが伝えられたらいいのに。
たいしてない知識をふりしぼり、言葉を選び言い訳をする。
「同情っていうか……なんて言うのが正しいのかわからないけど。有馬は生きたいのに、寿命が1日しかなくて。わたしは死にたいのに、寿命がばかみたいにあって。なんでこんなにままならないんだろうなって。だって、そうでしょ? 逆ならお互い幸せなのに」
「幸せ……?」
有馬は意外なことを言われたというように、目を見開いた。
それから「幸せ……」と何度か繰り返し呟き、空を見た。
琥珀色の瞳が、苦し気に揺れている。
「有馬?」
「僕の幸せはたぶん、もうない」
ひどく冷めた呟きにぎくりとした。
諦めが哀しいくらいに滲んでいる。
「あの日……家族と一緒に死ぬのが、僕にとっての最後の幸せだったんだ」
いまはじめて、そのことに気がついたように言う。