エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「聖?私は昔みたいに戻れることを願ってるよ」

「俺もそうなりたいと心から思っている。だけど今はまだ事情があってそれができそうにないんだ」

「そっか。なんか話が逸れちゃったね。ごめん……」

部屋の中から聞こえてきたそんな会話に思わずノックをする手を止めてその場を離れた。

意味深なふたりの会話を聞いてしまってドクンッと高鳴った心音が頭にまで響き出して、それを落ち着かせようと必死になる私がそこにいる。

昔みたいに戻れる事を願ってる? 俺もそう思っている? それってーーー

頭に浮かんだその思い。何も確証がある訳じゃない。だけどーーー

だとしても、私の推測が当たっているにしてもそれは私には関係のないこと。私たちは本当の夫婦ではないのだから。

聖さんが何をしようと誰を思っていようと、それを咎める権利はないのだ。これは、ただの契約結婚に過ぎないのだから、と言い聞かせ私はふたりのもとへと歩き出した。
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