エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
その答えもでないまま、美容室から戻ると母が頼んでいたケータリング店の人たちがいて我が家の和室のテーブルコーディネートや会席料理の準備をしていた。

ケータリングを頼むくらいならば、どこかの料亭の個室で会食すれば良かったのにと思った。

「今更だけど何で家で会う事にしたの?」

「社長さんがね、息子さんと一緒に酒蔵を見学なさりたいと言っていたの。だから家で顔合わせをする事になったのよ」

「へぇ……そうなんだ」

うちの酒蔵に興味を持ってくれた事は素直に嬉しい。そこに政略結婚なんていうものがついて来なければ手放しで喜べるだろうに。

ーーーピンポーン

それからしばらくすると、インターホンが鳴り一気に鼓動が高鳴った。私の意識はリビング端にあるモニターへと動く。普段、滅多に着ないスーツを身に纏った父が足早に玄関へと向かい、

「ほら、紗凪! ぼやっとしないで。私たちもお出迎えに行くわよ」

母がそう言って私の背中を押した。
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