エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「遠いところからお出で下さってありがとうございます。さぁ、どうぞ。中へお入り下さい」

先に玄関に向かっていた父のそんな声がして、あぁこの時がついに来てしまったのだと悟った。相手方はいったいどんな雰囲気の人なんだろうか?

意地を張って最後まで見合い写真を見ようとはしなかった。

だけどそれが余計に私の緊張を膨張させていく。
今更ながらに見合い写真くらいは見ておけば良かったと後悔するも時すでに遅し。

高鳴る心音を感じながら玄関にたどり着いた私の目に飛び込んで来たその光景に思わず、目を見開いた。

長身で品の良さそうな美男美女のご夫婦の後ろに見えた恐らくふたりの息子であろうその人物。

「う、そでしょう…?」

そんな言葉が漏れたと同時に鈍器で殴られたような衝撃が私を襲った。あまりの衝撃に息を吸うのも忘れてしまいそうだ。

何故なら、息子であろうその人物が私の知る人物によく似ていたから。でも、まさかそんな事がある訳なーーー


「初めまして。東條物産、社長の東條弥一です。こっちが妻の弥生で、それからーーー」

「息子の聖です。宜しくお願いします」

見間違いであってほしい。私のそんな心からの願いは好感度抜群の表向きスマイルと物腰の柔らかい挨拶によって粉々に碎け散った。

東條 聖。

私の頭の中で無限ループを繰り返すその名前。そう、彼は合コンですったもんだあった上に私の勤める同じ法律事務所で一緒に働く、いわば私の天敵。
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