エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
会食が始まって一時間あまり。互いの両親は意気投合したのか食事をしながら我が家自慢の日本酒を飲み楽しく談笑中だ。

私といえば作り笑いを浮かべながら時々振られる話に答えるのが精一杯。

一方、私の天敵、東條聖といえばその会話に時折入りながら笑顔を絶やさず。

うちの両親へのさりげない気遣いもあって、私が思うにうちの両親は完全に彼の虜に違いないが……

というか、いつものクールで無愛想で近寄りがたい彼はいったいどこにいったんだろうか? そもそも彼はどういうつもりでここに来たんだろうか?

「そういえば紗凪さん、お仕事は何をなさっているの?」

「えっ? あ、法律事務所で事務の仕事をしています」

「あら、凄い偶然! 聖さんも弁護士なのよ。凄い運命的ね」

奥様の弥生さんが興奮気味にそう言って隣に座る東條聖にニコリと微笑んだ。そんな弥生さんに彼は何も言わずに優しく微笑み返す。

どうやら同じ事務所で働いているという事はご両親には言っていないらしい。

いったい彼は何を考えているんだろうか? そう思いながらふたりのやり取りを見つめていたそのとき。

「すみませんが、紗凪さんとふたりきりで話したいので少しお借りしてもよろしいでしょうか?」

「どうぞ、どうぞ。紗凪、行ってきなさい」

「え?ちょっと……あの」

「紗凪さん、酒蔵の方を案内して頂けますか? 行きましょう?」

私の意思なんかまるで関係なし。私とふたりで話したいと意外な提案をした東條さんが立ち上がり私の手を引き、歩き出した。
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