綺麗なブルーを描けません
柊くんは、雪奈さんの前にいる。

優しい目で、表情で、彼女を覗き込んでいる。

こんな顔するんだなあ。

あたしは見たことがない。

見たことが、あるわけがないんだな。

柊くんは、そっと口を開く。

「今、オレに選ばれたくなんか、ないんだよね?」

少し首をかしげて言う。

彼女は、鋭い視線で、柊くんを見上げている。

柊くんは、そっとため息をつく。

「…わかった」

囁いて、自分のポケットから、折り畳んだ紙を引っ張り出す。

少し開いて、中身を彼女に見せると、

「あなたが、望んでいたものだよ」

また折りなおして、今度はその紙を彼女の服のポケットに落とした。

少しの間、彼女の目を見ていて、

それから、あたしに目を向けた。

何か、見てちゃいけなかった気がする。

申し訳なくて、ちょっとたじろいでしまう。

疲れた表情。

微笑んでるのに、心労が滲み出ている。

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