綺麗なブルーを描けません
「ごめんね、巻き込んで」

辛そうに言いながら、あたしの口の、テープをそっと剥がす。

そっとでも、痛い。

でも、黙ってる。

次に、手首のテープを見ると、引きちぎった。

かなりぐるぐるに巻かれてたのに。

よほど怒っていて、その怒りに任せたのか、一瞬で。

あたしは、自由になってしまった。

「帰ろう」

立ち上がって、手を差し伸べてくれる。

あたしは、その手を取っていいのかわからない。

だって、奥さんが…

でも、彼女の方も、怖くて見れない。

「いいの?奥さん選んであげなくて」

いつの間にか傍にいた、お兄さんは言うと、いきなり、柊くんを物凄い力で押し退けた。

柊くんは、不意打ちの強い力に押されて、柱に激突して倒れ込む。

あたしは、声も出なくて、思わず、駆け寄ろうとした。

でも、お兄さんの両手が、あたしの両肩を掴んで阻まれた。

「離してください」

目の前にいる、お兄さんを睨む。

お兄さんは、あたしをまじまじと見た。
< 108 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop