綺麗なブルーを描けません
何だろ。

虚ろに見る。

あれ?

携帯を持ち直す。

メッセージ、柚葉さんからだ。

しかも、

この会社の最寄り駅にいるって…

うそぉ…

あたしは慌てて、ロッカーからカバンを取り出すと、駅へ向かって走り出した。



いるっていったから、当たり前なんだけど、

当たり前なんだけど、

いつも使っている出口の改札の外に、本当に柚葉さんがいる。

いっつも柚葉さんのことを考えすぎて、頭から零れ落ちてきたのかと錯覚する。

ヒトはいっぱいいるけれど、自分の方にむかって走ってくる人間に気付いて、柚葉さんは目を上げる。


あたしを見つけて、笑ってる。

あたしの顔に、しまりのない笑みが広がる。

ブレーキをかける位置を間違えて、柚葉さんに、ほとんどぶつかりそうになりながら。

いや、ぶつかるショックを和らげるために、両腕で柚葉さんの両腕を押さえつけながら

「なっ、何でいるんですか!?」

止まり切れてないあたしを、柚葉さんは押さえてくれる。

「だって、柚葉さんがこっちに来られるのって、まだ数カ月は先なんでしょう!?」

柚葉さんは、いきなり食いつかれて、ちょっと引いている。

けれど、穏やか~にあたしを押し戻して、

「それなんだけどね…」

「嬉しいよ~」

寂しい頂点から一気に柚葉さんが現われる幸福に押し上げられたせいで、涙ぐんでる自分がいる。
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