綺麗なブルーを描けません
「...あ、柊責めちゃダメだよ。あいつ、平気で嘘つくタイプじゃないよ。...わかってると思うけど」

「じゃあ、何で嘘なんか...」

「嘘をついてしまってでも欲しい、大事な時間だったんじゃないかな」

大事な、時間…。

「ごめん、エマ。

その問題は今は独りで悩んでてくれ。

オレは、いま、柊が心配だ。

...あいつ、我慢強いけど、案外脆くて壊れやすそうなんだよな...急にいなくなったなんて」

「...携帯の電源、切ってるのかな...」

「さあ」

あたしは、鞄から携帯を探り出す。

柊くんからの連絡はない。

困ったことになってないといいけど。

「柚葉さん...黙っててくれる?」

「うん」

何を。って聞かずに即答で受け入れてくれたことに、そんな場合じゃないのに、笑いそうになる。

こういうとこ、好きだ。

「...さっきまで、柊くん、あたしのうちにいたんだ」

どういう反応されるかと思ったけど、表情を変えずに、聞いてくれてる。

こういうとこも、好きだな。

「...昨日、ちょっと荒れてて、でも、好きなだけ飲ませてあげようって思って、そしたら、やっぱり、ツブレちゃって。

...で、あたしのうちに連れてって、寝させました。

...妻帯者なんで、いろいろ、面倒だなって思ってあたしは、鍵置いて、ここに来たんです」

「最良、とは言えないけど、いい選択だと思う。

柊に連絡取ろう。オレと一緒だったってことに話を合わせさそう」
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