センパイの嘘つき


「柊木さん」


私の、名前。


私のこと、知ってるの?


彼がゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。


私は重い足を少しずつ後ろに下げる。


「大丈夫、怖がらなくていいんだよ」


「…何の用ですか」


声が、震える。先輩とは違う。この人は…


「あいつに、つきまとわれてるんだろ?」


「あいつって…」


「柳だよ!柳悠人!」


突然の大声に私の肩がビクリと揺れる。


「あんなやつが柊木さんに近づいて…困ってたんだよね?でももう大丈夫」


そう話す彼の頬がうっすらと赤くなっていて、私はゾッとする。


知っている。この表情。


あの時と、同じだ。


「いや…こないで!」


「なんで?僕は君を助けに来ただけだよ?」


カサリ、と音がして私は足元を見る。


ポケットから落ちた、里美ちゃんからのメッセージ。


_______今日は出張でいません。

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